伊吹山2023

  伊吹山は花の宝庫です。固有種をはじめ、約1300種類の植物が自生しています。田中澄江による『新・花の百名山』に選ばれ、山頂付近の植物群落は国の天然記念物にも指定されました。しかし、そんなお花畑が危機に直面しています。10年以上前から、シカの食害が始まり、山頂付近の花が激減したのです。 
花の激減の対策に乗り出したのが、「伊吹山を守る自然再生協議会」です。2015年から2年かけ、山頂周辺の約30haに高さ2mほどの柵を設置し、花の群落を囲いました。強風や降雪で柵が倒れたり、シカがネットを破ったりと問題にぶつかっていますが、粘り強くパトロールや維持管理を続けています。おかげで、保護されたところは美しい高山植物を見ることができるようになりました。  
 
ピンク色のシモツケソウの群生地が蘇ってきました。紫色のルリトラノオやクマガイソウ、赤色のミヤマコアザミなども混ざり、素晴らしい高山植物のオンパレードとなりました。 
駐車場から山頂へは、西登山道、東登山道、中登山道の3つのコースがあります。今回は西登山道で上り、東登山道で下りました。西登山道からは麓の平野や琵琶湖や竹生島の姿が見渡せました。
保護されたエリアは色とりどりの高山植物が咲き乱れ、素晴らしい光景でした。 
 
2013年の荒れ果てた姿 
 
シモツケソウの群生地  少しずつ防護柵設置 
「伊吹山を守る自然再生協議会」は2008年3月に設立されました。お花畑維持管理事業、登山道維持管理事業、公衆便所維持管理事業、パトロール・啓発活動など、伊吹山の環境および景観を保全、再生するために必要な活動を行っています。2015年、2016年の2か年をかけて、山頂お花畑周辺の植生防護柵を設置し、その後も維持管理を実施しています。 
滋賀県の北部に位置する伊吹山(標高1,377m)には日本海側と太平洋側の気候が入り交じる気象と石灰岩質に育まれた多くの動植物が生息しています。 
 
 
「伊吹山もりびとの会」の方が花の名前や保全の苦労について話をしてくださいました。「伊吹山もりびとの会」は来山者に伊吹山の自然や文化を伝えるとともに環境保全の重要性について啓発するという活動を行っている団体です。
「伊吹山もりびとの会」の方の話によると、地球の温暖化により外来種植物や平地植物が繁殖して、自然環境の汚染が深刻な問題になっているそうです。保護団体の方々が外来種植物を取り除いて、この美しい高山植物の風景を復活させていただいたのです。感謝したいと思います。
 
キオンが群生していました。   
伊吹山は標高1377mの起伏山塊です。石灰岩地帯に属していて、山頂にはカレンフェルト地形(石灰岩の墓石様地形)や巨大な石灰露岩が見られます。山頂にもシシウドなどの高山植物の群生地が見られました。
 
東登山道  シシウド 
標高1260mの山頂駐車場に戻ってくると、大勢の人が展望を眺めながらくつろいでいました。この日は下界は酷暑でしたが、伊吹山は涼しく、快適でした。 

(2023.8.4撮影)

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