遊牧民宅訪問(ゲル)

  モンゴルの高原地帯では、樹木が育ちにくいのですが、短い草が生えることから古くから牧畜(遊牧)中心の生活文化が発達しました。現在でも、大草原の広がる高原で、ヒツジ、ヤギ、馬、牛、ラクダといった家畜の放牧や遊牧が行われています。モンゴルの遊牧民は、季節によってもっとも遊牧に適した場所を探して、家畜とともに移動して暮らしています。家畜とともに草原を移動して生活する遊牧民が住むのは、モンゴル語でゲルと呼ばれる移動式の住居です。
  ゲルに住む遊牧民の家庭を訪問して、遊牧民の方に話を聞きました。 
移動するときには家を解体し、いくつかの部材に分けて運びます。床板をのぞく部材の総重量は、250~300kg。これらの部材を牛やラクダなどの家畜にのせて移動しますが、最近ではトラックが使われることも多くなりました。 
ゲルは組み立て式で、作りは非常にシンプルです。中心部の柱や屋根などは木材の骨組みから出来ており、側面の壁にはヒツジの毛で作ったフェルトを被せ、その上から防水性の白い布を覆いかぶせて完成です。ゲルの中は広い一部屋で、食事から睡眠、勉強まですべて行います。電気は通っていないのですが、今はソーラーパネルを設置してテレビを見ることができます。
 
移動先では、ゲルを一から組み立てます。2~3人が作業して、1時間半~2時間ほどでできあがり。一方、解体は1時間~1時間半ほどで終わります。 
 
 
円形の天窓「トーノ」の真下にはストーブが置かれ、「トーノ」から煙突を出してストーブをたきます。夏の昼間はほとんど「トーノ」を開けておきますが、気温が下がる夕方や降雨時は布「ウルフ」をかぶせます。夏でも夜間は温度が下がるので、ストーブをたくことがあります。 
乳から作った様々な手作りの食べ物を食べさせていただきました。まず、乳茶(塩入りのミルクティ)が出されました。さらに、アーロールというチーズ、ウルムという乳脂肪クリーム、ウルムをさらに高濃度にしたシャルトスというバター、アイラクという馬乳酒、など、さまざまな乳製品を試食、試飲させていただきました。馬乳酒は文字通り馬の乳から作られる酒で、アルコール度は1~2度と低めです。酒というよりは栄養ドリンクのように考えられているようです。ウォッカに似た無色透明のお酒として、ミルクの蒸留酒も作って飲みます。作り方は焼酎と同じで馬乳酒アイラクを蒸留させます。蒸留の回数を増やすことでどんどんアルコールの度数が高くなっていきます。
大草原で暮らす遊牧民のゲルが点在していました。親族でいくつかのゲルを建て、周りを囲って敷地を確保していました。 

(2023.6.27撮影)
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