月ヶ瀬桃香野

月ヶ瀬の玄関口にあたる桃香野地区には、巨大な岩に刻まれた千体磨崖仏や伝統的農村建築である菊家家住宅などがあります。塚田武馬『月瀬道の栞』には、「其(その)実桃の風味ありとて桃香の梅ともいふ、盖(けだし)地名の起因なるべし」と記されています。

<八幡橋周辺の梅>

2022年は梅の開花が遅く、3月7日に訪れた時には月ヶ瀬の梅はほとんどがつぼみでしたが、八幡橋付近の早咲きの梅が咲いていたので、撮影しました。 
    
 
    
 

(2022.3.7撮影)


<龍王の滝>

「龍王の滝」は約1300年前に、役の行者・小角(おずね)が見つけ、修行の場所として使っていたという言い伝えがあります。泉気が立ち上る渓谷から、奥に入ると48の滝があり、大滝には白龍が現れたというものです。 
    
 


<桃香野千体磨崖仏>

桃香野地区には各所の大石に高さ30cm大の磨崖仏がたくさん刻まれています。一ヶ所百体を数えるところもあって、合計430体ほどあります。江戸初期作造の像も小さく単調な彫りですが、素朴な趣のある磨崖仏です。
    
 
この大岩には、美しい小仏像が百体刻まれていましたが、道路拡張のときに、三分の一ほど割り取られてしまいました。なぜ、この地区に、いつ、だれがこのように仏像を刻んだのか、その詳細は、不明です。その昔この谷の一番高い城庵の一角が崩れ落ち、多数の人家が大災害に遭ったと伝えられ、村人たちは今後の安泰とその供養のため、残った大石に仏像を刻み、その無事を祈念したのではないかと言われています。 


<善法寺>

    
お掃除小僧 
 
善法寺石造十三重塔は、台座に延元元季(1336年)の銘があります。南北朝時代に南朝の元号を使っていることから、後醍醐天皇に関心を寄せていた人の建立と思われます。 
   
 
桃香野千体磨崖仏の割られた千体仏の一部が善法寺にあります。寺の下に無縁仏が沢山積まれていて、この中に三十八体あります。善法寺境内の「南無阿弥陀仏」碑に、「永禄六年 (1563年)供養74人・・・」とあり、山崩れの時期かと考えられます。 
    
 
善法寺からの展望  奥谷梅林 
善法寺からは展望がよく、赤い橋の月ヶ瀬橋、吊り橋の八幡橋、名張川、梅の花、茶畑が見える美しい風景でした。八幡橋は瀬戸大橋と同じ構造で「ミニ瀬戸大橋」とも呼ばれています。 


<菊家家住宅>

菊家家住宅は、月ヶ瀬エリアの入り口に当たる「桃香野」地区にある茅葺きの農家建築です。主屋は江戸時代中期の建立です。築300年程度と奈良市内でも最古級の住居建築です。菊家家住宅は、単なる「農家」ではなく「旅籠屋」も兼業していました。「菊家」はその際の屋号となっています。 1968年には国の重要文化財に指定されています。
 


(2022.3.21撮影)
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