岩船寺

 岩船寺は729年に聖武天皇が命じて行基によって、創建されたと伝えられています。皇子の誕生を感謝した嵯峨天皇(786-842)により堂塔伽藍が整備され、813年に岩船寺の名がつけられたと言われています。
 鎌倉時代には、約1キロ四方にわたって39坊の寺塔がありました。1221年の承久の乱により堂塔の大半が焼失し、その後、再建しますが、1311年にまたもや兵火によって消失し、衰微してしまいます。しかし、江戸時代になって文了律師の勧進や江戸幕府将軍の徳川家康・徳川秀忠父子の支援もあり寺内の整備が行われました。
    
 
山門  三重塔 
岩船寺は、木津川市の静かな山の中にあります。四方を山の樹林に囲まれ、境内では、春、夏には梅、椿、桜、睡蓮そして特にアジサイの花々が咲き誇ります。そのため「花の寺」として親しまれています。 
   
三重塔は、承和年間(834~847年)に仁明天皇が智泉の遺徳を偲んで建立したと伝わっています。現在の三重塔は、1442年に建立されたものです。ほとんどの寺院の塔は下から見上げるのみですが、岩船寺では、三重塔の周りを囲むように上がっていく小道があります。このため来観者は珍しいことに18mの高さの塔を上から、またあらゆる方向から見ることできます。
 
鐘楼 
 
三重塔と阿字池  隅鬼 
三重塔の各層のそれぞれの四隅に小さな像があり、肩で垂木を支えているのが間近で見てとれます。この像のことを隅鬼と言います。全て違った表情をしており、重要文化財に指定されています。  
   
 
阿弥陀如来と四天王立像  本堂 
岩船寺の本堂には本尊、衣をまとった阿弥陀如来が祀られいます。阿弥陀如来坐像は3m近い高さがあり、巨大な一本の木(ケヤキ)から造られています。制作の正確な日付が、像内に発見された銘文により1000年以上前の946年であるとことも知られています。制作日の判明する阿弥陀如来坐像の中で、岩船寺の像が一番古いと考えられています。本尊阿弥陀如来坐像の須弥壇の四隅には、寄木造彩色の持国天・増長天・広目天・多聞天の四天王立像が安置されています。1293年の作です。
   
本堂  十三重石塔 
本堂と本尊は、江戸時代に徳川家の寄進により修復されました。現在の本堂は、1966年に再建されました。
十三重石塔は1314年妙空僧正の建立と伝えられています。13個の笠石を積み重ねた高さ6.3mの石塔です。 
  十一面観音菩薩像  普賢菩薩騎象像
十一面観音菩薩像は、あらゆる方向を常に見て、人々を悩みや苦しみから救い、願いをかなえる菩薩です。鎌倉時代作で左手に花瓶を持ち、女性的な美しい像です。
普賢菩薩騎象像は像高39cmの小像で平安時代後期の作です。一木造りの彩色像で女性的な姿の当時代を代表する優品です。この像は、法華経に説かれる六本の牙を持つ白象に乗る普賢菩薩で、法華経を信じる者を護持するといわれています。 
   
 
不動明王立像 石室不動明王 
石室は花崗岩製で、奥壁には不動明王立像が薄肉彫りされています。前面二本の角材柱を立て、その上に寄棟造りの一枚岩の屋根をかけた珍しい様式となっています。応長2年(1312年)の銘があります。
    
 
鎌倉時代末期造の厄除け地蔵菩薩  
   
 
石風呂  五輪石塔 
石風呂は、鎌倉時代に寺塔39坊の僧が身を清めたといわれています。
五輪石塔は、鎌倉時代作で2m余りあり、東大寺別当平智僧都の墓と伝わっています。
 

(2022.4.4撮影)
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