青峯山正福寺

青峯山正福寺は、標高336mの青峯山山頂にある広大な寺院です。青峯山深くに多数の堂宇が点在する真言宗の古刹で、海上保安の祈願所として知られます。 
    
 
金堂  十一面観音 
本尊の十一面観音は相差の海より鯨背に乗って現われ、この寺に遷されたと伝えられています。730年に聖武天皇は東大寺建立に当り伊勢神宮に参詣し、「青峯山に霊験あらたかな観音像あり、この地に伽藍を建立し尊像を安置すれば直ちに所願成就すべし」との霊夢を蒙りました。早速行基を遣わし一伽藍を建立し、正福寺と名付けました。 
境内には本堂、聖天堂、大師堂、如意輪堂、弁天堂、など建ち並び巨刹のたたずまいを見せています。
    
弁天堂、大師堂、聖天堂 
聖天堂から金堂へは回廊が続き、その壁面には多数の絵馬などが掛けられています。特に海の安全を願う絵馬が多く見られます。
    
鐘楼堂  
 
  大門の仁王像 
漁業や船舶関係者の信仰が厚く、旧暦1月18日には「御船祭」が行われ、海上の安全を祈願する多くの人々で賑わいを見せます。
    
 
大門  隠れ海老の彫刻 
入口にそびえる大門は、1842年にの完成といわれています。江戸時代後期の彫刻集団であった立川流の見事な彫刻が彫られています。中でも門左上にある波間にひそむ伊勢エビは「隠れ海老」として評判になっています。
 
山門前の高さ約7メートルの石灯籠は、1845年に大阪西宮の小西酒造を中心とした樽廻船中が奉納したものです。石材は木反りに載せて磯部道から運び上げたと記録にあります。前面に「永代常夜燈 大阪西宮 樽舩問屋中」、裏面には「天保八丁酉年五月 海上安全」と刻まれています。
    
 
  夫婦杉 
正福寺境内にある夫婦杉は平清盛がお手植えしたと伝えられています。かつては寄り添って二本ありましたが、伊勢湾台風によって男過ぎが倒れたため、現在では女杉のみが残っています。 


<燈明石>

海上安全の守護として全国の漁師たちの信仰を集める青峯山正福寺の近くに「燈明石」と呼ばれる巨岩があります。地元の漁師の間では、その昔、夜に方向を見失った船は、月明かりを受けて白く光るこの岩を目印に岸に戻ってくることができたと伝えられています。
今では木々が生い茂り、海からこの岩を見ることはできませんが、漁師たちの間では遭難船を導いてくれると信じられています。 
 
石碑の側面には、「又の名を龍燈石とも云う 文目もわかたぬ荒天に一すじの光明を発して海中を照らし急難を救わせ給うと云う」と刻まれています。このように荒天の夜には岩が光を発して船を導き、かつては毎夜護摩を焚いて海上安全を祈ったともいわれています。
燈明石近くの駐車場からの眺望 

(2022.3.9撮影)
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