アジャンター石窟群 Ajanta Caves

  アジャンター石窟群は、インドのデカン高原にある30の石窟からなる仏教石窟寺院群です。紀元前2世紀から7世紀中頃まで堀削されていたもので、インド最古の仏教壁画が残り、世界に誇る仏教芸術の傑作でもあります。
 石窟は紀元前2世紀~紀元後2世紀頃(前期)と5~7世紀頃(後期)に造営されたものです。石窟は、僧侶たちの住処であった僧房のヴィハーラ窟と仏塔を中央に安置した祠堂であるチャイティヤ窟に分けられています。石窟は30あるうち、第9窟、第10窟、第19窟、第26窟、第29窟の5つはチャイティヤ窟で、それ以外はすべてヴィハーラ窟です。前期窟が簡素な造りであるのに対し、後期窟には仏像が据えられ、仏教説話に題材をとったレリーフや色鮮やかな壁画で装飾されています。 
ワゴーラー川に面した断崖に30の窟群が並ます。紀元前2世紀から紀元6世紀にかけてワゴーラー川の上にある崖をくり抜いて造られた石窟群です。 しかし7世紀頃になると、ヒンドゥー教の台頭とともに仏教は衰退しはじめ、アジャンターの石窟寺院も放棄され、生い茂る木々に覆い尽くされていきました。アジャンター石窟寺院は、1819年4月、狩猟に参加していたイギリス人士官が虎狩りをしていたときに、巨大な虎に襲われてワゴーラー渓谷に逃げ込んだ際、断崖に細かな装飾が施された馬蹄形の窓のようなものを見つけたことが発見の契機となりました。


【第1窟】

後期ヴィハーラ窟を代表する第1窟は、壁や天井が壁画で覆われ、なかでも「蓮華手菩薩像」は最高傑作と称えられます。東アジア仏教美術のベースとなった壁画が壁や天井を覆っています。仏像や彫刻も精密で、如来や菩薩たちの物語が生き生きと描き出されています。
正面回廊から石窟内部に入ると、内部中央には広い方形の空間があり、奥は本尊のブッダ像を祀る本堂になっています。 
本尊のブッダ像 
右が蓮華手菩薩像 
蓮華手菩薩像(5~6世紀)は右手に青蓮華をもち、「麗しの菩薩」の異名をもちます。第1窟中の傑作です。 

【第2窟】
第2窟は、後期ヴィハーラ窟で5世紀後半に造営されました。前期窟では、僧の居住空間に用いられたヴィハーラ窟は、後期窟では、第2窟のように仏堂が取り付けられ仏像が本尊として祀られました。
壁画は、本生譚や仏伝などの仏教説話図で埋められています。右には千体仏が一面に描かれています。 
中央が仏堂、天井装飾も見事です。 
アジャンター石窟群は断崖に築かれたもので、ワゴーラー川沿いの550mもの距離に30もの石窟が並んでいます。 

【第9窟】
第9窟は前期チャイティア窟で、仏塔があります。紀元前1世紀に造営されました。
 
第9窟入口  仏塔 
仏塔は仏像表現のない時代に信仰の核となりました。  
 


【第10窟】
 第10窟は紀元前に造られた前期窟です。まだ仏像という概念がない時代に造られたので内部には仏像ではなく仏塔(ストゥーパ)があります。
 
アジャンター石窟群の壮大さは、当時の王の力を物語っています。紀元前2世紀から1世紀のものもありますが、多くは紀元5世紀半ばにインド中央部を広く支配したヴァーカータカ朝のハリシェーナ王の時代に造られ、一時期は数百人の僧侶が洞窟で生活していたといわれています。

【第16窟】
第16窟は、後期ヴィハーラ窟です。彫刻は多くありませんが、美しい壁画が数多く残っています。
 
 第16窟の入口に設置されたエレファント・ゲートです。左右にゾウの石像が置かれています。

【第17窟】
第17窟は、後期ヴィハーラ窟です。第17窟のジャータカ物語やシンハラ物語の壁画は第1窟にも劣らない美しさです。  
 
天井も壁も壁画が見事です。   

【第19窟】
第19窟は、は5~7世紀に掘られた後期のチャイティヤ窟です。この時代に仏像が伝わり、中央には仏塔と仏像を合体させた本尊と、両側には丹念に施された彫刻が残っています。また、石窟内部自体が馬蹄形となっています。
 
後期のチャイティヤ窟は、ストゥーパの正面に龕(がん) を造って仏像を彫刻し、仏像がストゥーパと一体になり中心的位置を占めるようになりました。これは、仏像を祀ることにより、信仰の対象が、舎利を納める仏塔から仏像へと変化していったことが知られています。

【第26窟】
第26窟は、後期チャイティア窟の集大成ともいえます。精緻なレリーフ装飾が施され、インド最大級の釈迦涅槃像が残されています。 
 
第26窟入口  ストゥーパと仏陀倚坐像 
涅槃仏 
第26窟はインドで最大級の大きさである涅槃仏(全長7.3m)が横たわっています。涅槃仏の周りや列柱に施されている彫刻も素晴らしく、見ごたえがあります。

【入口から石窟へ】
チケット売り場から石窟まで、階段を登っていきました。4人1組でかついでくれるかごに乗って登ることができます。足を痛めていたツアー参加者がかごの体験をしました。高い位置になるので怖いようでした。 
 
 
かごに乗って石窟まで  石窟の配置図 

(2024.10.20撮影)
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